バックオフィスというと、企業の売上げに貢献する営業に対し、裏方で経営を支える総務、人事、経理、経営企画などを指しているかと思われます。
日本の会社では、同じ部署に留まることはほとんどなく、従業員を様々な部署に異動させ、会社内で経験値を積み上げていくことになります。また、同じ部署に留まることによる不正などを防止するため、一定年数の経過後、異動させることもあります。さらに、会社によっては、営業を経験していなければ、一定以上の役職には出世できないようなケースもあります。
大手企業にもなれば、専門性の高い人材を雇い、バックオフィスとしての機能を高めることができるかもしれませんが、ほとんどの企業では、ある意味、バックオフィスを営業の片手間として運営せざるを得ない状況にあると考えられます。この場合、生え抜きで経理などのスペシャリストを育てることは難しいでしょう。
専門性をまたいだ人事異動が頻繁にある日本では、同じ会社内ではツブシが効くかもしれませんが、ヘッドハンティングされることもないし、転職での優位性にも差がついていくことになります。
以上のことは、日本の「サラリーマン」の働き方です。通常、日本で「お仕事は?」と聞かれた際、「〇〇社の社員(会社員)です」という受答えをします。これが日本の一般的なサラリーマンだと思います。
ところが、仕事と会社が一体化し、職種が判然としないのは日本独自のことだそうです。世界に目を向けると、会社に所属してマニュアル(規定)通りに仕事をするのが「バックオフィス」(日本で言うところのサラリーマン)であり、専門性の高い「スペシャリスト」としての職種を答えます。例えば、企業に属して経理の仕事をしていたとしたら、「会計士」という答え方になります。自分自身がある分野に特化して生きているからこそ、職種が答えられるわけです。ある意味で、日本の大手企業によって雇われた専門性の高い人材は、海外の働き方に近い人たちということになります。これに対し、ほとんどの日本のサラリーマンは、会社側の人事に則った働き方をしているに過ぎないため、よそに行って通用しないこともあるわけです。
また、日本のサラリーマンは会社の規定に則った仕事をしている人も多いのではないでしょうか。現代にはAIも出現しており、マニュアル通りの仕事はAIが取って代わる時代も到来すると言われます。人事異動のローテーションに乗っかり、規定の通りに浅く広く経験を積んだものの、何か特徴がない場合、AIに取って代わられ、仕事を失うことがあるかもしれません。コロナ時代においては特に顕著となることでしょう。
つまるところ、大学を卒業し、単に就職しただけでは、スペシャリストにはなれませんので、早いうちから自身が特化できるものを自身が見いだし、スペシャリストとして活躍できる場に飛び込んでいくしかないのだと思います。
私自身、日本のサラリーマンとしてバックオフィスを経験していますが、社内では通用しても、スペシャリストにはなれていないことを猛省したいと感じています。