昨今の日本において、気象災害が多発しています。昨年(2019年)は、立て続けに8月「九州豪雨」9月「台風15号による被害」、10月「台風19号による被害」が発生し、激甚災害に指定されています。そして、今年(2020年)は新型コロナウィルスにより様々な影響が出ている最中、追い打ちを掛けるように、日本各地にて河川氾濫などの豪雨被害・土砂災害が発生し、さらに梅雨空が続く模様です。
今般、豪雨被害に遭遇された方は、コロナウィルスによる影響もあって、復旧の人手が不足し、日常生活がままならない状況が続いているというマスコミ報道を聴きました。いち早く日常生活が取り戻せるよう、切にお祈りいたします。
毎年、気象災害が相次いでいることを踏まえると、自宅や職場付近の危険性を把握することはもちろん、WITHコロナの時代、避難のあり方も含めて行政が主導するだけではなく、各人が考えて行動する時代に突入していることを実感します。各地で被害が相次ぐ中、幸いにして災害を経験していない地域や人々は、いざ災害が発生しそうな時、前もって避難行動に踏み切ることは本当に決断力が必要だと感じます。
ところで、災害と地名には関連性があるのでしょうか?例えば、「川」「江」「沼」「池」「谷」「沢」などの字が地名に含まれていると、元の地形が河川や沼・池など水に関する土地であったと推定され、軟弱地盤で地震や洪水被害が起こりやすいということが言われます。
実際に元の地形が水に関する軟弱地盤であり、ハザードマップ、液状化危険度マップなどにより災害発生リスクの高い土地はあります。その反面、地名から危険度を判断しすぎるのも問題があるということです。地名と地形が必ずしも一致しない場合もあるからです。
「平成26年8月豪雨」により大規模な土石流が発生した「広島市安佐南区八木」では、災害発生後、一部マスコミにて、同地区の古くからの地名が「蛇落地悪谷」であった旨が報道されました。
そして、蛇の降りるような水害が多かったことから、「蛇落地」と名付けられたのではないかとする老人の証言なども取り上げられ、後に「蛇落地」が「上楽地」という名称に変更された経緯から、由来の悪い地名を隠してしまったのではないかと指摘しています。
この指摘に対し、「蛇落地」は、「安芸国の戦後武将が大蛇を退治した地」ということが由来であり、江戸時代には既に「上楽地」という表記が見られ、さらに明治時代に八木字上楽地が八木〇丁目となった経緯は、町村合併による経緯から、悪い由来を隠したものではないという専門家の意見があります。
以上のことから、土地柄、もしかしたら災害の起こりやすい地域であったことは確かかも知れませんが、悪い由来の地名と災害発生の関係性は一概に言えないことが分かります。
さらに、一見地盤の良さそうな「台」に関連した例として、東京都に目黒区「青葉台」という地名がありますが、面積の半分は目黒川沿いの沖積地となっています。やはり、地名と災害の因果関係を見いだすことは、誤った認識を持ってしまう可能性があるということです。
実際に土地の状況を把握するためには、行政の情報等を活用するなどして、正確な認識を持つことが必要です。例えば通常の「ハザードマップ」に加え、土地の異なる災害リスク(洪水想定域・津波浸水域・土砂災害警戒区域等)をクリック1つで重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」が参考になります。
また、戦後米軍が撮影した航空写真まで遡れる国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」、さらに古い時代を知りたいのであれば法務局にて「旧土地台帳附属地図」や、地元図書館で古地図、住宅地図も閲覧できます。
根拠がないまま、地名に含まれる漢字から連想せず、間違いなく土地を把握していくことが大事であると感じました。