近年、日本においても少子高齢化などの影響により、人口減少の予兆が生じています。ところが、そのような中でも新築住宅着工数は堅調に推移してきており、供給過剰ではないかと感じられ、その反面では、空き家問題なども発生し、ストックを生かし切れていないことが分かります。
2018年には中古住宅の販売時にインスペクションを義務化し、顧客が中古住宅の中身を把握して購入できるような体制を整備したものの、中古住宅の流通には時間が必要と思われます。
ところで、新築住宅着工数が堅調とはいうものの、2019年は減少に転じており、これは銀行の不正融資・アパート建築不備の問題に伴い、賃貸アパートの着工数が減少したことによる影響が大きいということです。
(色々な形態がありますが)賃貸アパートは、「一括借上げ(サブリース)方式」と「家賃保証」を謳い文句とし、土地活用と収入面のメリットを口実にして、着工数を伸ばしてきた背景があります。なお、「一括借上げ方式」とは、サブリース会社がオーナーから物件を借り上げて、入居者に又貸しする仕組みをいいます。「家賃保証」は、契約年数はサブリース会社が家賃を払い続けるので安心できます、という内容です。
不動産・建築コンサル、設計者、建設、管理、サブリースの会社が一体であり(総じてサブリース会社と言います)、状況により一概には言えないですが、(提案・設計・建築・管理のどれをとっても)グループ会社の有利な対応になりやすいと言えます。
アパート経営収支の提案書は、固定資産税等の支出項目が抜けていたり、自己資金をつぎ込まないと収支が合わなかったり、一見すると利回りが良く見えるように作成することも想定されるでしょう。
家賃保証についても、入居が厳しい物件、周辺賃料相場の変動時は支払い家賃を見直し(減額)する場合もあるということです。
建設面では、建築確認申請の設計書仕様どおりには完成できず、マスコミ報道にもありましたが構造や内壁等に不備があり、設計監理が行き届いていない部分も否めません。
なお、不動産投資ということに関しては、やはりオーナー側も大きな投資をするわけですから、提案に対し、将来的な収支とキャッシュフローを判断できる力は必要かと思います。
ただし、オーナーとしては不動産の素人であり、農地等空き土地の活用を図りたい一心で、消費者という立場で対応せざるを得ないので、サブリース会社とは知識の差も規模も異なります。宅建業者が自ら一般消費者と取引する場合は、契約に際して様々な誓約が課されますが、建設、管理、サブリースの会社には特段の誓約はなく、太刀打ちすることはできないと思われます。
このような中で、2020年3月6日、「賃貸住宅管理適正化法案」の閣議決定がなされました。サブリース会社による勧誘・契約締結行為の適正化、賃貸住宅管理業の登録制度の創設が主柱になります。法制化によりサブリース会社側と賃貸借契約を締結するにあたり、サブリース会社側には重要事項を適正に説明する義務が発生します。法制化により、消費者側が不利益を被ることは少なくなるかもしれませんが、消費者側としても慎重に判断していくことには変わりはないでしょう。賃貸アパート着工数の減少は、消費者側が慎重になっていることの表れかもしれません。